【メッセージ】

先日、東京港野鳥公園に行ったら、コチドリに出逢いました。全長16cmくらいで、目の周りの黄色いリングが印象的。ユーラシア大陸に広く分布していて、日本には夏鳥として渡来するとのこと。一方、練馬区立平和つつじ公園ではつつじが満開。気温も急上昇で、夏がぐんぐん迫って来ています。
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【タイワンショット】

 ■MRT(台北捷運)

台北捷運は、交通渋滞を緩和する為に設置された捷運(地下鉄・新交通システム)のこと。正式名称は台北都会区大衆捷運系統(Taipei Rapid Transit System)といい、一般的に「MRT」と呼ばれています。とても便利な交通機関で、松山空港と桃園空港の両方から台北市内に簡単にアクセスできます。車内や改札口に黄線で示されている制限エリア内の飲食は禁止となっているので、観光客は注意が必要です。ペットボトルで水を一口、は許されません。

全線地下鉄と思いきや、途中からいきなり高架になって展望が開けるという意外性があります。文湖線など、見事な景観の中を走って動物園駅に向かいます。自動運転システムなので「ゆりかもめ」同様、最前席で子どもたちが大喜びです。台北に行ったら、MRTに乗ったままのんびり市内観光するのも楽しいですよ。

▼動物園駅付近のMRT文湖線と車内
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【週刊エッセイ】

「夢二と台湾との出会い」その15

“夢二、台湾へ(6)”

昭和8年(1933113日、台湾初の夢二展覧会が始まりました。開催場所は、1年前に竣工した「警察会館」。豪華な内外装で、ビリヤード遊技場までそろっています。開会式が行われたという資料はありませんが、展覧会を提案した東方文化協会会長の河瀬蘇北の力もあり、警察はもちろんのこと、台湾総督府関係者には十分な周知が行われていたのではないかと思われ、鳴り物入りの初日とあって、多くの来場者があったことと思われます。しかし、当時の世相として、警察の施設が一般の日本人や台湾人に行きやすい場所であったかどうか、日本の絵画を扱う台湾人の画商などが来やすく入れる場所であったかどうかは、怪しいものであったでしょう。

「夢二 異国への旅」(袖井林次郎著)によると、この日の夜、東方文化協会台湾支部設立の記念事業として台北市内の臺灣医専講堂で講演会が開かれ、「台湾日日新報」主筆の尾崎秀真(ほづま)が開会の挨拶を行いました。この人は、この後ゾルゲ・スパイ事件で死刑となる尾崎秀実(ほづみ)の父でもあります。夢二がソーテル(1920年ころから日系人が移住したロサンゼルスの町。「リトルオーサカ」とも呼ばれた。当時から続く商店などが、今も街に点在)で親交を結んだ沖縄出身の画家・宮城與徳(よとく)も、これより少し前にこのスパイ団に参加するために半ば公然と日本に入国していました。もちろん、このことは尾崎も夢二も知りませんが。

この講演会では、夢二が「東西女雑観」を講演しました。あまり講演が好きでない夢二ですが、洋行帰り第1回目の正式公演は台湾で行われたことになります。題材はいかにも夢二らしいものですが、内容に関する資料はないので、夢二のヨーロッパでの日記などから類推するしかありませんが、ドイツやオーストリア、スイスでの女性のスケッチや詳しい記述が記録されているので参考になるかもしれません。河瀬蘇北は「東方文化の時代」と、東方文化協会の趣旨を台湾支部開設にからめて述べたものと思われます。

ところで、「竹久夢二画伯滞欧作品展覧会」の出品作は、54点といわれています。滞欧作品『海浜』『女』『旅人』等の他、枕屏風『春夢幻想』『榛名山秋色』の近作、さらに有島生馬との合作で四尺二枚折屏風『舞姫』があったとのことですが、米欧の旅から帰国して1か月後の夢二がいきなりこんなに多くの作品を用意することは難しく、あちこちからかき集めたり、ひょっとしたら船中でも描いていたかもしれません。

「台湾日日新報」に会場の夢二が写っている写真が掲載されています。移りが悪いので表情は読めませんが、相変わらず笑わない夢二がそこにいます。展示物も見えますが、夢二らしい作品のようにも見受けられます。資料のない状態での説明になって恐縮ですが、実は、夢二研究会会員で現在台湾で夢二展を開催中の王文萱氏がこの展覧会の目録を提供しています。これを見ると展示された作品のタイトルがわかります。これが、この後紛失(盗取?)の憂き目にあう夢二作品ですが、今後の調査によりひとつでも見つかることを期待してやみません。

最終日115日の「台湾日日新報」に次のような記事が出ています。最終日にどの程度力を発揮したか疑問ではありますが、非常に好意的な講評文です。

 

「竹久夢二画伯滞欧作品展覧会」(臺灣日日新報)

「久々で竹久夢二君の繪を観る。時代の潮に姿を没したかに思はれてはゐたが、此の畫家が持つ昔ながらの「人間情熱」は、まだ作品の上にまざまざと活きている。否或る點で一部洗鍛され老熟して来たかの観もあり、相當に面白く観られた。油絵は柄でないようだ。多くの日本畫的手法による半折の美人畫には、藝術作品として卓抜さがドレ程あるかは疑問としても、人間の持つ情熱を描き出さんとして愈々刻苦してゐる夢二張りの長所は十分に認められる。

「萬里脚」などは小品ながら佳い。風景を畫いても此畫家は自分の情熱を畫面にさらけ出して楽しんでゐるといふ形ちだ。「榛名山風物」その他数作なぞはソレで相當に書けて来た書のうま味と共に南畫的情趣の世界を別に展開して来た。そして俳畫境にも一展開を見せてゐる。鋭い天分で藝術界を一貫する工作は無いとしても、情熱の動きをコレほど如實に傳へて呉る畫家も然う多くは無いといふところに、夢二君の存在価値は依然として認めてよいと思ふ。(鷗汀)」

 

こうして夢二展覧会は大きな販売成果もなく115日に終了することになりますが、夢二の台湾出発予定日は1111日。同日に「台湾日日新報」にエッセイを寄稿していますが、それまでの6日間の記録が全くありません。夢二がずっとホテルの部屋に閉じこもっていたとは考えられないので、おそらく台北市内を歩き回るか、東方文化協会の誰かに案内してもらって市内見学をしていたなどということも、夢二のヨーロッパでの行動から見て十分考えられます。それがエッセイのもとになっていることも十分考えられます。

次回は、そのエッセイに行く前に、夢二のいた台湾の環境を知るため、当時の台湾の様子を「風刺漫画で読み解く 日本統治下の台湾」(坂野徳隆著)を参考にして、夢二が訪台した当時の台湾の社会情勢を見てみることにします。おたのしみに。(つづく)

▼展覧会場の夢二(「台湾日日新報」(掲載日不明))台湾日日新報(昭和8年11月)

 ▼夢二展覧会の目録(王文萱氏提供)

夢二展「竹久夢二的視界」台湾2 211205 (2)
夢二展「竹久夢二的視界」台湾3 (2)

▼「風刺漫画で読み解く 日本統治下の台湾」(坂野徳隆著):日本統治時代の台湾事情を風刺の目で紹介している貴重な書籍です。

 本「風刺漫画・日本統治下の台湾」

【夢二の世界】

PART 3 KAWAIIの世界」(「竹久夢二 かわいい手帖」(石川桂子著)より)

22 絵物語 小供の国  

子どもや動物などを題材にした短いお話や詩が50編と、それぞれにつけられた挿絵で構成された『絵物語 小供の国』は、夢二にとって初めての子ども向けの本でした。英語の伝承童謡である「マザー・グース」を夢二流に翻訳した詩も含まれ、バラエティーに富んだ読み物になっています。挿絵はやわらかな中太の線で対象がシンプルに描かれました。幼子たちのあどけない表情が微笑ましく、どの作画もほのぼのとした雰囲気に包まれています。

※マザーグースは、「Mother Goose 鵞鳥(がちょう)おばさんの意」で、イギリスの伝承童謡集。18世紀後半ジョン=ニューベリーによって Mother Goose's Melody として集大成された。「メリーさんの羊」「ロンドン橋」などは日本でも広く知られています。「マザーグース」の名は、メアリー=クーパーが1744年にロンドンで出版した子ども向けの小型本に用いたのが最初。(精選版 日本国語大辞典「マザーグース」より)日本では、北原白秋が大正10年(1922)に日本で初めて翻訳・出版して紹介しましたが、夢二はそのかなり前から独自の翻訳で詩を紹介しています。(編者注)

▼「竹久夢二 かわいい手帖」(石川桂子著)より

本「かわいい手帖」小供の国

 

 

【夢二の言葉】(新企画)

恋人は、逢へば嘘ばかり言ひ合ふ。別れてかへれば真実のことも考へる。

           

妬むことでもなかつたら、恋人たちはどんなに退屈なことであらう。(『恋愛秘話』(大正13年(1924))

※抽出した言葉は「竹久夢二 恋の言葉」(石川桂子著)を参考にしています。同書では挿絵とともに編集・制作されていますので、ぜひご購読ください。「華やかな恋愛遍歴のイメージとはうらはらに、繊細で複雑な夢二の恋心は、時には自分も相手も傷つけ、多くの苦悩と悲哀に満ちていました。夢二の日記や手紙、また著作や雑誌に残した恋愛の言葉を100選りすぐり、加えて独特の感性で人間の内面を表現した挿絵とともに構成し、夢二の真の恋愛観・女性観に迫ります。」(同書「はじめに」より)

【夢二情報】

●「竹久夢二 恋の言葉」(石川桂子著、河出書房新社)

 大正のボヘミアン・夢二が綴る恋愛観、理想の男女の関係とは……!?夢二の言葉に、新たな恋の予感……。(同書の帯より)

本「恋の言葉」表紙 (2)

●「浪漫1920s—竹久夢二的視界」で刺繍教室。

北投文物館では次々とイベントを展開しています。今回は刺繍体験。刺繍で夢二の椿を作って飾る楽しい企画です。

▼台湾でキャッチされた紹介画面(陳杏香さん提供)

刺繍体験